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スコットランドの酪農草地、バイオ炭施用で土壌の総炭素量や収穫量が大幅アップ


"SRUC building" by Magnus Hagdorn from UK is licensed under CC BY-SA 2.0
"SRUC building" by Magnus Hagdorn from UK is licensed under CC BY-SA 2.0

英公立研究機関スコットランド・ルーラル・カレッジ(SRUC)の酪農研究・イノベーションセンター内において現在、酪農草地の有機肥料にバイオ炭を加えてその併用効果を検証する先駆的なフィールド試験が行われています。


バイオ炭の施用開始から一年、土壌の総炭素含量が51%、総窒素含量が22%増加し、草地の年間収量も16%の増加が期待されるなど有望な結果が示されたことから、同試験を主導する英国のブラック・ブル・バイオチャー社(BBB)が2024年6月20日、同社ウェブサイトにその詳細を発表しました。


この試験は、バイオ炭の活用を中心に気候変動問題に取り組む英ブラック・ブル・バイオチャー社(BBB)、英公立研究機関スコットランド・ルーラル・カレッジ(SRUC)、英生態学・水文学センター(UKCEH)などが共同で実施しているフィールド試験です。


英国の生産業者のための解決策としてこの取り組みの有効性と実用性を評価し、さらにこの取り組みを通してBBBの主力商品であるバイオ炭”PinChar”を酪農に生かすことによる利益を定量化するとしています。


同試験は2023年4月にスタートしました。有機肥料のスラリー(ふん尿混合液肥)にPincharをわずか1%比で混ぜ、水分などを加えてつくられたSlurry-Pinchar Mixが、対象となる区画に施用されました。1ヘクタールあたりの施用量はスラリー50トンに対しバイオ炭は0.5トンです。


この結果、スラリーのみを施用した区画と比較して、1年目の草地収量が16%も増加するという顕著な成果が示されたことから、少量で目的に応じて調整したバイオ炭の施用が、草地の生産性と持続可能性の向上に大きな可能性を秘めていることが示唆されました。


特定の目的に応じたバイオ炭を用いることで、低用量でも、根の周りの局所的な土壌特性が改善され、作物がより多くの栄養素を取り込むことができるようになるとしています。


バイオ炭の持つ高い表面積、多様なサイズでの多孔性、負の表面電荷により、PinCharは土壌中の栄養素を効果的に吸着・保持します。Slurry-Pinchar Mixを施用した区画では、炭素と窒素のレベルが明らかに高く、スラリーのみを施用した区画と比較して、土壌中の総炭素含量が51%、総窒素含量が22%向上するという結果が得られました。


これまで、バイオ炭を10t/ha以上の高い施用量で実施してきたフィールド試験が数多くある一方で、少量かつ目的に応じた適用に焦点を当てたものはほとんどなく、この適用は農業での大規模な実施においてより実用的であるとしています。


「こうした結果は、草地農業において、特定の目的に応じたバイオ炭製品の低用量施用を効果的に活用することを後押しする有力な証拠となります。この試験は、わが社のバイオ炭製品が有機肥料と効果的に組み合わされ、成長を飛躍的に促進し、ミネラル肥料の投入量を減少させる可能性があることを示しています」と、BBBのCTO兼共同設立者であるハミッシュ・クレバー博士は述べています。


なお、このフィールド試験は、草地区画だけでなく耕作地区画でも実施されており、作物の生育を終えた耕作地での検証も含めた最終的な結果は2025年春に公開される予定です。


<参照情報>

First Year of Biochar Field Trials Yields Promising Results for Sustainable Agriculture

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