アイルランドでバイオエネルギー産業を推進する非営利有限責任会社Irish Bioenergy Association (IrBEA)は2024年1月12日、アイルランド政府が2023年12月に発表した気候行動計画で、初めてバイオ炭とBECCS(CO2回収・貯留付きバイオマス発電)の炭素除去の方法としての役割を認めたことを報告しました。
IrBEAのプロジェクト・エグゼクティブのStephen McCormackは「バイオ炭と、私たちがともに野心的に気候行動を実施するうえでバイオ炭が担う潜在的な役割について、ようやく言及があったことを嬉しく思います。(中略)気候行動計画案でバイオ炭に触れていることが歓迎されている一方で、これは最初の一歩であり、さらなる政策の策定、調査、支援が必要だという見方もあるかもしれません」と述べています。
アイルランドのバイオ炭産業を代表する組織であるIrBEAでは、この新しいセクターにかかわるメンバーの数が増えています。メンバーは、バイオマス供給者、技術の提供者や設置者、コンサルタント、研究機関や研究分析者、生産者、ユーザーなど多岐にわたります。
IrBEAは、EUの加盟国間の協力を支援するInterreg Northwest Europe (NWE)が出資する一連のプロジェクトにも参加しています。そうしたプロジェクトを通して、国際的なパートナーが協力し、知識転移と製品開発のアイデアが広がることでバイオ炭が果たす役割について重要な理解が深まっています。
CASCADEプロジェクトという最新のプロジェクトでは、試験地域であるドニゴール県内でバイオ炭の利活用シナリオをさらに展開していくため、IrBEAは産業関連のステークホルダーとともに取り組む予定です。この地域では、農業、園芸、環境の分野でのバイオ炭の利活用が重視されています。
2023年は、アイルランドにおいてバイオ炭の転機となった年でした。IrBEAは、同年にバイオ炭に関する会議を大成功に収めたほか、農業食料海洋省の意向を受けて、同国の農業由来の植物性廃棄物の持続可能な管理について調査するために、実現可能性の研究を開発しました。その報告書では、農業由来の植物性廃棄物を燃焼する代わりにバイオ炭を生産・使用することが、実現可能で有望かつ持続可能な方法の一つであることを明らかにしています。
2023年は、国レベルでも欧州レベルでも、カーボンファーミング(農地土壌の改善などを通して、大気中のCO2を土壌や作物に閉じ込め、温室効果ガスの排出削減を目指す農法)に関する議論にバイオ炭が含まれた年でもありました。
Stephen McCormackは次のように締めくくっています。「2024年はアイルランドでこの新しいバイオ炭のセクターが発展し、心躍る年になることは間違いありません。ロスコモン県を本拠地とするArigna Fuelsは、新たにバイオ炭生産工場を稼働させる予定です。それはすなわち、アイルランドが欧州で最大級のバイオ炭生産設備の拠点の一つになるということです。ほかにも、数多くの生産工場が稼働中や計画中などの段階にあり、各工場で開発されている技術の生産性と精巧度の規模もさまざまです。バイオ炭の可能性に関する気づきや認識は、いろいろな政府省庁、研究機関、産業で明らかに高まってきています。私たちは、このセクターをさらに発展させ、強固なCDR(二酸化炭素除去)戦略として位置づけるために、熱心なBiochar and Carbon Products(仮訳:バイオ炭と炭素に関する製品)のワーキンググループをはじめとするメンバーや、ほかのステークホルダーと協力して取り組みを続けていくことを楽しみにしています」
<参照情報> PRESS RELEASE: IrBEA welcomes the recognition of Biochar and BECCS in Ireland's draft Climate Action Plan 2024
Comments