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米スタンフォード大学、実環境を考慮したバイオ炭の評価方法を提案、炭素市場での信頼性向上の可能性も


スタンフォード大学は2025年2月11日、バイオ炭の炭素貯留の評価方法に関する新しい研究について発表しました。環境科学の専門誌『Environmental Research Letters』に同日に掲載されたこの研究は、現在の方法は、バイオ炭が環境にもたらす本当の恩恵をかなり過小評価している可能性があることを指摘しています。


スタンフォード大学ウッズ環境研究所の環境ベンチャー・プロジェクト・プログラム(Environmental Venture Projects Program)と同大学のサステナビリティ・アクセラレーター(Sustainability Accelerator)の支援を受けたこの研究は、従来の永続性の評価基準に疑問を投じ、バイオ炭のプロジェクトを評価する上で、もっと微妙な差異に対応した枠組みを提案しています。


バイオ炭の魅力は、長期間にわたって土壌に炭素を貯留する能力にあり、炭素が温室効果ガスとして再び大気中に戻るのを防ぎます。この永続性、すなわち難分解性が、バイオ炭の有効性を決める重要な要素です。


しかし、バイオ炭の永続性の評価は、ほとんどが、水素対炭素比というたった一つの評価基準によって決定されています。このシンプルな方法は、土壌内でのバイオ炭の安定性と相関関係があると考えられますが、スタンフォード大学の研究によって、この方法は過度に単純化されている可能性があることが明らかになりました。


研究者たちが既存のバイオ炭の永続性に関する最大のデータセットを再分析したところ、水素対炭素比のみに依存することによって、土壌の種類や環境条件、バイオ炭の原料の変動性といった、極めて重要な要素が考慮されていなかったことが分かりました。こうした要素がなければ、多くの場合、実環境での炭素貯留の結果と、土壌の健全性と穀物にもたらされる恩恵をモデルで予測することはできません。


同研究によって、「現在の基準は、多くのバイオ炭プロジェクトの炭素貯留の可能性を過小評価しているかもしれない」ということも分かりました。永続性評価の基本となる場合が多いラボでの実験は、管理しやすいものの、大抵は実環境の条件を正確に再現できていません。例えば、現地調査をすれば、土壌組成や現地の気候といった要素が、施用されたバイオ炭の働きに多大な影響を与え得ることが分かります。


バイオ炭の永続性を過小評価しているとしたら、相当な炭素貯留量がクレジット化されていないことになります。つまり、特にカーボンオフセットの需要が高まった場合は、経済と政策に関する問題を生み出しかねないということです。


このような欠点に対処するために、研究者たちは2段階評価のプロセスを提案しています。まず、施用前のバイオ炭がCO2を除去する可能性を仮に推定し、次に現地測定によって、推定を経時的に精緻化していきます。研究者たちは、「このアプローチであれば、プロジェクトの付加価値を引き出し、予測モデリングのデータを改善し、炭素市場でのバイオ炭の信頼性を高められる」と主張しています。


同研究は、環境の変動性がバイオ炭の働きに与える影響をより良く把握するために、世界各地で協調的に現地試験を行う必要性についても強調しています。こうした試験を行えば、実環境での変動性を考慮した新たな永続性の基準に関する情報が得られ、もっと正確なカーボンクレジット化への道が開ける可能性があります。


同研究の共著者で、スタンフォード大学工学部化学工学科の博士課程学生であるA・J・リングスビー(A.J. Ringsby)氏は、「市場のほとんどの技術と違って、バイオ炭は今すぐにでも取り掛かり、実施できる炭素除去の手段です。その最大の可能性を明らかにするために、データの改善、基準の強化、そして、コミュニティとして協働し、適切な実験を考案することが必要なのです」と述べています。


<参照情報>

Stanford Woods Institute for the Environment

Biochar: bridging a gap in carbon removal strategies


Environmental Research Letters

Do oversimplified durability metrics undervalue biochar carbon dioxide removal?

 
 
 

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