旅行による環境やコミュニティへの影響を変えることによって脆弱な地域を守る活動を行う米国の非営利組織Sustainable Travel Internationalは2024年3月6日、地球とコミュニティ、旅行の持続可能な未来を形成する上でバイオ炭生産が果たす役割等に関する考察を発表しました。
同組織は、旅行のカーボンフットプリントを相殺して大気中からCO2を除去する一端を担うために、旅行会社や旅行者はバイオ炭のカーボンクレジットの購入を検討すべきだとしています。それを購入することによって、レスポンシブル・トラベル(責任ある観光)の需要の高まりに合致する形で、より持続可能な未来へのコミットメントを具体的に示すことができます。
同組織はバイオ炭のカーボンクレジットを提供するために、スウェーデンのPlanboo(熱帯地域でのバイオ炭生産を通して炭素除去を支援するプロジェクト開発企業)と提携しています。
Planbooは、バイオマスをバイオ炭に変えるために必要なツールや技術、トレーニングを熱帯地域の農家に提供しています。農家がバイオ炭を生産すると、同社が革新的な技術と厳密な科学に基づく測定方法によって、その炭素除去量を測定し、独立認証機関がカーボンクレジットとして認証します。
これまでにSustainable Travel Internationalのカーボンオフセットのプログラムは、Planbooの二つのプロジェクトを支援しています。
一つはスリランカ南部のエルピティヤでのプロジェクトで、紅茶やシナモン、ゴムの農園から生じる農業廃棄物をバイオ炭に変えています。それを堆肥に混ぜ、農園の作物に使用し、ほかの農家にも販売しています。
もう一つはタイでのWongPhai(竹の使用を促進するタイの環境団体)とのプロジェクトで、昔から建築業や農業、漁業で使用されている竹竿の生産過程で生じる切れ端をバイオ炭に変えています。同プロジェクトでは、この栄養豊富なバイオ炭を地元の小規模な米農家や竹農家に提供しています。
旅行会社は、「人々がどのように世界を理解し、世界と交流するか」に影響を与えるという特有の立場にあるため、環境に関する影響や解決策を中心に、魅力的で深い理解につながる旅行体験を取り入れて、持続可能性に関する行動を起こすきっかけを提供することができます。
Planbooは、旅行者がプロジェクトの影響を自分の目で確認できるように、カーボンクレジットの購入者のためのツアーを組みたいという要望を受け入れる姿勢をとっています。そうしたツアーでは、同社のバイオ炭プロジェクトが行われているスリランカの紅茶やゴムの農園やタイの竹やぶを訪れ、地域の農業の現場を見学することができるでしょう。また、バイオ炭の生産設備の見学や、使われている技術や方法の実演を加えることもできます。
そうすると、さらに良い旅行体験につながるとともに、旅行、バイオ炭に関する取り組み、気候変動の緩和、そして地域のリジェネラティブ農業(環境再生型農業)の間で生まれる相乗効果が注目されることになります。
<参照情報> What is biochar and how is it a tool for sustainable tourism?
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