「二酸化炭素を大気から除去すると同時に気候中立な熱エネルギーをつくりだす」――脱炭素化に重要なこの2つの対策を両立する施設が、バルト海に面するドイツ北部の町グレーヴェスミューレンに新たにオープンしたことを2023年10月、ハンブルグに拠点を置くクリーンテック企業Novocarboが発表しました。
「Carbon Removal Park Baltic Sea (CDR-Park Baltic Sea)(カーボンリムーバルパーク・バルト海)」と呼ばれるこの施設は、バルト海沿岸地域で持続可能な産業活動を推進するGreen Industrial Area(グリーン産業地域)の一部メクレンブルク=フォアポンメルン州のグレーヴェスミューレンに建設されました。ここには産業活動において脱炭素化を進める企業が集まっています。
同施設をオープンしたNovocarboもバイオ炭による炭素除去などを通して脱炭素ソリューションを推進する、ヨーロッパを代表するスタートアップ企業のひとつです。
同社は、この施設がCO2除去とグリーン発電をトータルでアプローチするドイツで唯一の実施例であるとし、ここで毎年3,200トンのCO2を大気から除去し6,600MWhの気候中立な熱エネルギーを生み出し、1,700トンのバイオ炭を生産するとしています。
バイオ炭による炭素除去技術を発揮するこのCDR-Parkは、世界で最も効果的にCO2を除去する技術のひとつであるとし、これはドイツで気候変動対策に取り組む先駆者たち独自の協力によってつくられたもので、複数の気候変動対策がひとつに組み合わされたものであるとしています。
有機物残渣をバイオ炭に加工するための熱分解技術は、ドイツのPYREG社の最先端の技術が使われています。生産されたバイオ炭は土壌改良材などに使用されますが、この熱分解プロセスで生じる廃熱が気候中立なエネルギーとして利用されます。このエネルギーは、グレーヴェスミューレンの市営公共事業団体Stadtwerke Grevesmühlenにより、2023年の暖房シーズンから、地区のエネルギー供給網に提供されることになっています。これにより、約1,800世帯へのエネルギー供給がより環境に優しいものとなり、再生可能エネルギーの割合も60%から75%に増加するとしています。
すでに同社の脱炭素ソリューションを利用する企業もあり、2033年までには全世界でさらに200のCDR-Parkの建設が予定されているとしています。
Novocarbo CEOのCaspar von Ziegner氏は、「当社のCDR-Parkは、大気からCO2を除去しながら気候中立な熱を発生させることができ、パリ協定の目標達成に大きく貢献します。Stadtwerke Grevesmühlenとの協力によりドイツのエネルギー転換を推進し、エネルギー産業における発電の脱炭素化を支援できることを嬉しく思います。クリーンテックのスタートアップ企業と自治体の公益事業との協業は、ネット・ゼロ目標の達成に向けて脱炭素技術を迅速かつ上手く展開していくために進むべき道なのです」と語っています。
また、Stadtwerke Grevesmühlenプロジェクト課のJens Wilmsも、「Novocarboの脱炭素技術は、簡単に適応でき拡大できるため、特に中小規模の自治体にとっては大きな可能性があります。エネルギー供給会社としては、熱輸送パイプラインを建設するだけで良いので、余計な投資費用を節約でき、短期間での導入が可能になります」と語っています。
<参照資料>
Novocarbo opens largest Carbon Removal Park in Germany
Interreg Baltic Sea Region
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